月経前症候群(PMS)とは
月経(生理)周期の特定の日、一般的には月経の直前に、女性の感情、体調、行動などに影響を及ぼす状態です。
多くの場合、月経(生理)が始まると症状が軽くなり快方に向かうのが特徴です。
月経前症候群(PMS)の症状
月経前症候群(PMS)の主な症状は、以下のような身体的症状と精神的症状があります。
身体的症状
- 偏頭痛
- 下腹部の痛みや膨満感
乳房の痛み
肌トラブル(にきび)
痙攣
腰痛
むくみ
めまい
肩こり
便秘
下痢
食べ物への渇望(特にお菓子)
光または音に対する過度な反応 など
精神的症状
- 倦怠感
- 疲労感
イライラ
情緒不安定
憂うつ感
注意力の低下
睡眠障害 など
月経(生理)が始まる1週間前から症状が現れる人が多いのですが、2週間前から症状が現れる人、2、3日前に集中する人など個人差があり、通常は月経が始まると症状はおさまります。
月経前症候群(PMS)の症状は人によって様々で、年齢を経るごとにその症状が変化する人も多くいます。
月経前症候群(PMS)のメカニズム
月経前症候群(PMS)の直接的な原因は現在でも解明されていませんが、多くの研究から月経周期の初めに起こる女性ホルモンとセロトニンの分泌の変化に関係していると考えられています。
女性ホルモンであるエストロゲンとプロゲステロンの分泌レベルは、月の特定の時期に増加しますが、妊娠していない場合、排卵後にエストロゲンとプロゲステロンの分泌レベルが劇的に低下し始めるため、脳内ホルモンや神経伝達物質の異常を引き起こし、精神的落ち込み、不安、イライラなどの精神症状を引き起こすと考えられています。
エストロゲンとプロゲステロンは、月経前症状に関連する脳の一部の活動も調節しています。
また、脳内物質であるセロトニンの分泌レベルは精神の安定に大きく影響します。セロトニンは、脳内で働く神経伝達物質のひとつで、感情や気分のコントロール、精神の安定に深く関わっています。
エストロゲンとプロゲステロンとは?
卵巣から分泌される性腺ステロイドホルモンで、女性ホルモンと呼ばれます。
排卵前(卵胞期 )にはエストロゲンが必要。そのエストロゲンは、卵胞の発育と共に産生されるため卵胞ホルモンとも呼ばれます。
排卵後(黄体期)にはプロゲステロンが必要。そのプロゲステロンは、黄体でつくられるため黄体ホルモンとも呼ばれます。
月経前症候群(PMS)の有病率
日本では月経のある女性の約70~80%が月経前に何らかの症状があります。生活に困難を感じるほど強いPMSを示す女性は月経前不快気分障害(PMDD:Premenstrual Dysphoric Disorder)と呼ばれ、その割合は5.4%程度と言われています。
アメリカ保健福祉省によると、90%以上の女性が何らかの症状を抱え、平均して30代の女性がPMSを持っている可能性が最も高いと報告しています。※
※元データ「U.S. Department of Health & Human Services」
2003-2004年のフランスでの調査によると、全体の72%が何らかの症状を示し、全体の4.1%が重度のPMS、8.1%が中程度のPMSと、合計で12.2%の女性が日常生活に影響を与えるPMS症状を抱えているという結果が得られました。※
※元データ「月経前症候群の有病率と経時的な変動:フランスの人口ベースの調査の結果」
To explore the experience of reproductive-age women in the F…
月経前症候群(PMS)の危険因子
以下のような条件は、月経前症候群(PMS)を引き起こしやすい因子であると考えられています。
高いレベルのストレス
- 産後うつ病またはうつ病などの病歴
- 月経前症候群(PMS)の家族歴
- うつ病の家族歴
- 家庭内暴力
- 薬物乱用
- 身体的外傷
感情的トラウマ
月経前症候群(PMS)と年齢
月経前症候群(PMS)の症状は、30代後半または40代になって閉経に近づき 、閉経周辺期と呼ばれる閉経期に移行するにつれて悪化する場合があります。月経周期中のホルモンレベルの変化に敏感な女性の場合、特にその傾向があります。
更年期に至るまでの数年間、体が徐々に閉経期に移行するため、ホルモンレベルも予測不可能な形で上下することが多くあるためです。
閉経後は症状はあらわれなくなります。
月経前症候群(PMS)と偏頭痛
偏頭痛(片頭痛)は男性よりも、特に低血圧の女性に多い神経学的疾患です。思春期前には男女ほとんど同じ割合で偏頭痛を発症するのに対し、成人では約75%が女性にあらわれる症状です。
特に、月経に関連することが多く、女性患者の約半数は、自身の月経に関連して片頭痛が起こることを自覚しています。月経時の偏頭痛はそのほかの時期に起こる頭痛に比べて、持続時間が長い、痛みが強い、薬が効きにくいなどの特徴があります。
月経前症候群(PMS)の対処法・予防法
1. マグネシウムを積極的に摂る
細胞間のカルシウムやカリウムなどミネラルの輸送をつかさどっているのがマグネシウム。マグネシウム摂取を増やすことにより、月経前症候群(PMS)の症状を改善する臨床結果が多く出ています。
また、エストロゲンの分泌と深く関連し重要なビタミンB6やトリプトファン、カルシウム、多価不飽和脂肪酸(オメガ-3およびオメガ-6)なども積極的に摂りましょう。
- マグネシウム:ほうれん草、牡蠣、大豆製品、米、みそ、ひじき、まぐろ、のりなど
- ビタミンB6:かつお、まぐろなどの魚類、レバー、肉、バナナなど
- トリプトファン:牛乳、大豆、果実など
カルシウム:乳製品、葉物野菜、大豆・大豆製品、海藻、小魚など
多価不飽和脂肪酸(オメガ-3・オメガ-6):くるみ、アマニ、魚類、大豆、コーンなど
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2. 適度な有酸素運動をする
定期的な有酸素運動は、疲労感や精神的な落ち込みなどを軽減し、月経前症候群(PMS)の症状を軽減してくれます。また、ウォーキング、ランニング、サイクリング、水泳などの有酸素運動は、心拍数と肺機能を向上させてくれるので、症状がある日だけでなく、定期的な運動を心がけてください。できれば毎日少なくとも30分の運動をすることがおすすめです。※
※元データ「有酸素運動、気分状態、月経周期の症状」
There is not enough high-quality evidence to show that dieta…
3. 食べ物に気を付ける
月経(生理)の2週間程前から、カフェイン、塩、砂糖を多く含む食べ物や飲み物を避けると、月経前症候群(PMS)が軽減される場合が多くあります。
4. 十分な睡眠をとる
8時間程度の睡眠をとるように心がけてみてください。睡眠不足はうつ病や不安につながり、気分が悪くなるなどの月経前症候群(PMS)を悪化させる可能性があります。
5. ストレス発散の方法を見つける
友達と話したり、日記を書いたり、どんなことでも良いので自分に合ったストレスを内側から外側に発散できる方法を見つけて実践してみてください。ヨガ、マッサージ、メディテーションなど、どんなことでも結構です。
6. 喫煙は避ける
喫煙した女性は、喫煙しなかった女性よりも多くの月経前症候群(PMS)があらわれるという研究結果が出ています。※
※元データ「年齢および社会人口学的要因による月経前症状の変動に関する世界的な疫学研究」
These results suggest that the premenstrual symptoms most as…
月経前症候群(PMS)とマグネシウム
月経前症候群(PMS)と深く関わりのあるとされる女性ホルモン・エストロゲンとプロゲステロンは、生殖腺や副腎においてコレステロールから生成されますが、このコレステロールは、マグネシウムなしでは合成されません。
マグネシウムがホルモン(インスリン、甲状腺、エストロゲン、テストステロン、DHEAなど)、神経伝達物質(ドーパミン、カテコールアミン、セロトニン、GABAなど)、ミネラル電解質に果たす役割はとても大きく、細胞膜電位(細胞の内外に存在する電位の差)を制御する役割はマグネシウムがつかさどっており、膜電位が多くのホルモン、栄養素、神経伝達物質の取り込みと放出を制御していることが分かっています。
月経前症候群(PMS)女性の栄養状態
世界的に有名なアメリカ人医師・Dr. Russell Marzによる食事調査では、月経前症候群(PMS)女性の栄養状態が以下のように明らかになりました。(「Medical Nutrition from Marz 2nd Edition」より)
- マグネシウムの摂取量が77%も低い
- 鉄分の摂取量が53%も低い
- 亜鉛の摂取量が52%も低い
- 精製糖の摂取量が275%も高い
- 精製炭水化物(砂糖・白米・小麦粉など)の摂取量が63%も高い
- 乳製品の摂取量が79%も高い
- ナトリウムの摂取量が77%も高い
月経前症候群(PMS)とマグネシウム欠乏
月経前症候群(PMS)患者105人を対象にした試験では、正常な女性群と比較して月経前症候群(PMS)患者のほうが赤血球マグネシウム値が有意に低かったとの結果が出ています。※
※元データ「マグネシウムと月経前症候群」
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著者について
早稲田大学理工学部卒業後、栄養関連の商品開発・情報編集などに15年以上従事。固定観念に囚われず、世界の新しい情報をいち早くキャッチし、既存のデータと組み合わせて新しい付加価値を生み出すことを心がけている。
趣味は、欧米の臨床試験データや研究論文を貪り読むこと。