【はじめに】
マグネシウムはカルシウムについで二番目に多い生体内の二価の陽性イオンであり、その生体内分布をみてみると血液中の濃度は概ね3.4~5.6mg/dlであり、それ以外にも骨部位に約60%、そして筋肉部位に20%ぐらい存在していると言われています。
マグネシウムの生理的作用は、まずエネルギー基質の酵素反応や神経伝達物質に関連するホルモンへの影響などをはじめとしてたいへん多岐に渡り、およそ生体内の約300種類の酵素活性の調節機構に関与しています。
また、マグネシウムは血管作動性物質としても作用しており、特に血管平滑筋の弛緩作用 を有していると考えられています。
このように生体の微妙な恒常性の維持にとって、マグネシウムは広範囲にわたって深く機能していると言えます1)。
現代の日本人は、代表的ミネラルであるカルシウムだけでなく、その他にもカリウムやマグネシウムが慢性的に不足していると伝えられています。
例えば、カリウムは高血圧予防になりますし、マグネシウムはメタボリックシンドロームを予防するために必要な成分であると考えられています2)。
今回は、マグネシウムを摂取する重要性、ならびにマグネシウムを有効的に摂取する方法を中心に説明していきます。
【第1章】マグネシウムを摂取する重要性とは?
必須ミネラルは全部で現在のところ29種類程度あると言われており、それぞれが人体にとって重要な働きをもたらします。
なかでもマグネシウムは骨や歯の柔軟性や弾力性を高めて寝たきり要因のリスク疾患である骨折をしにくくさせるほかにも、神経の興奮を抑える、あるいはカルシウムの作用を代償的にコントロールして筋肉の収縮や弛緩機能を調整する役割を普段から果たしています。
このように、マグネシウムは多岐にわたる酵素活性を補助していますので、仮に体の内部のマグネシウムがよほど低下してしまうと様々な症状が認知されることに繋がります。
例えば、マグネシウムの欠乏症状としては、神経や筋肉関連では痙攣やひきつけを起こしやすくなりますし、ふくらはぎのこむらがえりや振戦、めまいなどの症状を来す可能性もあります。
同様に循環器関連では頻脈性不整脈が出現する、そしてジギタリスを服用している患者さんにおいてジギタリス中毒を助長させることも考えられており、消化器系では腹痛や便秘症といった様々な症状を自覚することがあります。
また、精神行動面では注意力が散漫になり、記憶障害や抑うつ状態に陥ることもあり得ますので、様々な観点から日常的にマグネシウムを摂取することは重要であると言えるのです。
【第2章】マグネシウムを有効的に摂取する方法とは?
身体にとって重要な役割を発揮するマグネシウムはアーモンドをはじめとする種実類や魚介類、藻類、野菜類、豆類などに多く含まれていると言われています。
特に日本人は歴史的にマグネシウム成分が多く含まれている穀物や植物性食品を諸外国よりもより多く摂取してきた民族といわれており、現在も精米などの穀物から高頻度にマグネシウムを摂取しています。
マグネシウムを有効的に摂取するためには、当然のことながらマグネシウムを多く含む食品を積極的に摂ることが必要であります。
マグネシウムは多くは腸管から再吸収されて、そのほとんどは具体的には遠位空腸や回腸などの小腸で吸収されると言われています。
そして、小腸で吸収後には腎臓で排泄される栄養素であり、別のミネラル成分であるカルシウム物質を多く摂りすぎてしまうとその分マグネシウムの排泄が増えてしまうので、マグネシウムとカルシウムはおよそ1対2ぐらいの比率で摂取するのが望ましいバランスです。
さらには、ひとつの食品から一度に大量に摂ろうとするだけでなく、他にもサプリメントや経皮クリームなどさまざまな種類のマグネシウム製品を組み合わせることで有効的にマグネシウムを摂取できるとも言えます。
【まとめ(おわりに)】
マグネシウムは、生体内のホメオスタシスの維持調節に深く関わっており、普段から摂取不足にならないようにすることが数々の病気の予防につながります。
また、マグネシウム製剤は腎機能が顕著に悪化している場合を除いては長期服用しても副作用は比較的少なく、かつ経済性や安全性に優れているので必要量を積極的に摂取するように心がけましょう。
例えば、白米に大麦を混ぜてみる、あるいは麺類にゴマなどをトッピングする、そして味噌汁にワカメやシイタケなどの藻類や野菜類を入れるなどして食事内容を工夫すると、マグネシウムを有効的に摂ることができます。
食生活が不規則になりやすく、食事だけではマグネシウムが不足しがちな人では、マグネシウムの栄養機能食品やサプリメント、そしてマグネシウムの多いミネラルウオーターやマグネシウムクリームなどを活用してみるのも一つの選択肢です。
「アンチエイジングミネラル」とも言われているマグネシウムを毎日コンスタントに適切な方法で十分量を摂取して、楽しく元気に過ごして健康的に長生きしましょうね。
今回の情報が少しでも参考になれば幸いです。
引用文献
- 福生吉裕:マグネシウム製剤の臨床治療への有効性. 東京未病研究会雑誌. 1995 年 1 巻 1 号 p. 20-28
DOI https://doi.org/10.11288/mibyou1995.1.20
- 渡辺和彦:骨粗しょう症対策に農産物ミネラル、ホウ素とケイ素--健康な人体の源は何と!作物を育てる肥料、土壌改良資材であった(ミネラル管理の重要性、作物と人の健康).季刊肥料.110 号.17~27.2008.DOI https://www.hifa.or.jp/wp-content/uploads/2016/12/pdf1.pdf
著者について
■専門分野
救急全般、外科一般、心臓血管外科、総合診療領域
■プロフィール
平成19年に大阪市立大学医学部医学科を卒業後に初期臨床研修を2年間修了後、平成21年より大阪急性期総合医療センターで外科後期臨床研修、平成22年より大阪労災病院で心臓血管外科後期臨床研修、平成24年より国立病院機構大阪医療センターにて心臓血管外科医員として研鑽、平成25年より大阪大学医学部附属病院心臓血管外科非常勤医師、平成26年より救急病院で日々修練しております。
■メッセージ
私はこれまで消化器外科や心臓血管外科を研鑽して参り、現在は救急医学診療を中心に地域医療に貢献しております。日々の診療のみならず学会発表や論文執筆等の学術活動も積極的に行っております。その他、学校で救命講習会や「チームメディカル:最前線の医療現場から学ぶ」をテーマに講演しました。以前にはテレビ大阪「やさしいニュース」で熱中症の症状と予防法を丁寧に解説しました。大阪マラソンでは、大阪府医師会派遣医師として救護活動を行いました。