高齢者がマグネシウムを摂取する意義

  • 2021年12月14日
  • 2021年12月28日
  • 高齢者

【はじめに】

今や、本邦では人生100歳時代に突入しています。

長い社会生活を送るうえで高齢者が自信をもって快適な日々を過ごすためには、日々のヘルスケアは必須ですよね。

御存知かも知れませんが、ミネラル成分は主要な三大栄養素である炭水化物や脂質、そしてたんぱく質に加えてビタミンを含めた五大栄養素のひとつと言われており生体にとって重要なファクターです。

そもそも、人体にとって必須のミネラルは16種類あると言われ、このうちマグネシウムもカルシウムやカリウムなどと並んで主要なミネラルのひとつとされています。

以前より、厚生労働省が健康増進法に基づいて高齢者を始めとして日本人の食事摂取基準量を規定していますが、現代人の多くが、マグネシウムの慢性的な摂取不足に陥っていると考えられています。

また、本国のみならず米国の科学アカデミー医学研究所の食品栄養委員会においても日々の食事摂取基準としてマグネシウムや他の栄養素の推奨摂取量が提示されています1)。

それぞれのミネラルは、体の機能を正常に保つために様々な役割を担っていますが、中でも高齢者における生活習慣病などの予防対策として重要な位置づけにあるミネラルとして近年注目が高まっているのが「マグネシウム」です。

今回は、高齢者がマグネシウムを摂取する意義について説明していきます。

【第1章】高齢者がマグネシウムを摂取する重要性とは?

少し古いデータにはなりますが、2015年の本邦におけるマグネシウムの食事摂取推奨量では、1日あたりのマグネシウムの摂取量を70歳以上の男性では320㎎、70歳以上の女性では270㎎と設定するように提唱しています。

一般的には、高齢者においては若年成人と比較して食事からのマグネシウム摂取量が減少すると言われています。

さらに、加齢に伴って腸管でのマグネシウムの吸収率が低下し、腎臓からのマグネシウムの排泄量が相対的に増加する傾向があります。

また、高齢者は若年者に比べて慢性疾患に患いやすく、マグネシウムの状態を容易に変化させる薬剤を服用していることも多くみられるために、マグネシウムが体内で欠乏するリスクが上昇することが懸念されています。

通常、マグネシウムが欠乏すると初期徴候として、食欲不振、悪心、嘔吐などの消化器症状をはじめとして、他にも倦怠感や手足の脱力感などが引き起こされます。

さらに、マグネシウム欠乏症が進行して悪化すると、筋痙攣や発作性痙攣、そして人格変化が現れて、それ以外にも頻脈性不整脈や冠状動脈の攣縮などを生じる可能性があり、生命に直結する危険性が潜んでいます。

そして、男女共に加齢にともない便秘の頻度が増加していきます。

現代において、高齢者の中でも特に80歳以上では、便秘頻度が約15%程度になると言われており、全体の高齢者のおよそ3割近くの方に便秘症状があることが推察されています。

高齢者の便秘症において有効な治療法は、まずは生活習慣の見直しです。

生活習慣の中でも、特に運動と食事が大切なポイントであり、無理のない範囲で散歩や農作業を行うなど少しずつでも良いのでマイペースに体を動かすようにしてください。

高齢者の人は、日常習慣の改善に取り組み、便秘解消などを含めてマグネシウムを最低限は摂取するように心がけて健康的に生活していきましょう。

【第2章】高齢者がマグネシウムを摂取する手段とは?

通常では、マグネシウムは主に植物性・動物性食物、そして飲料に広く含まれているとされており、ホウレンソウのような緑色の葉野菜、マメ科植物、ナッツ類なども優れたマグネシウム成分の供給源となり得ます。

そして、一般的には食物繊維を含む食物はマグネシウムを含んでおり、それ以外にも一部の朝食用シリアル製品や強化食品にも添加されていることが多いです。

ですから高齢者において日々の食事をする面では、体調が悪い場合やひどい下痢症状がある場合を除いて出来る限り豆類や野菜類、そして海藻類などの食物繊維の比較的多い食材を積極的に摂取する必要があると言えるでしょう。

注意すべき点は、小腸や大腸が活性化して蠕動運動を活発になる朝の時間帯にしっかり食べるということです。

起床後すぐに冷たい水や牛乳を飲むという嗜好を有する人もいるかと思いますが、高齢者の場合には成人よりも胃腸の吸収、消化機能などが低下しているため、却って下痢や食欲不振、腹痛などを引き起こしかねず逆効果と考えられますので気を付けてくださいね。

また、高齢者の方にはあまり馴染みが少ないかも知れませんが、近年ではマグネシウムサプリメントが広く普及しており、酸化マグネシウムやクエン酸マグネシウム、塩化マグネシウムなど色々な形で容易に入手できますので気軽に摂取することが出来る有用なツールです。

そして、例えば便秘症で悩んでいる高齢者の人にとっては、整腸作用のある乳酸菌製剤や中毒性に陥りにくい酸化マグネシウム化合物などは、安全かつ有効な手段として既に医療機関で第一選択的に大規模に用いられています。

また、エクストラ・ストレングス・ロレイドなどのマグネシウム製剤は胃酸過多が原因の逆流性食道炎における胸やけ症状や胃の慢性的な不調症状を呈する慢性胃炎に対する一部の治療薬に使われることもあります。

ただし、これらの医薬品の種類や用法によっては、マグネシウムサプリメントとの相互作用を有するか、生体内のマグネシウムの存在状態に影響を与える可能性が考えられます。

ですから、このような医薬品やそれ以外の経皮吸収型マグネシウムクリームなどを定期的に活用している高齢者の方は、マグネシウム摂取に関してこまめにかかりつけ医や周囲の医療スタッフたちと相談するようにしてくださいね。

【まとめ(おわりに)】

マグネシウムは高齢者の体内にも含まれている重要なミネラル成分です。

マグネシウムそのものは、一部の食物にも含まれていますし、他の食物に添加されたり、サプリメントとしても利用され、制酸薬や便秘薬など一部の医薬品にも配合されています。

マグネシウムは、体内におけるさまざまな生化学反応を制御する300種類以上の酵素系の補助因子として特に注目されています。

マグネシウムはエネルギー産生を中心に人体が健康的に活動するために必要な成分であり、日常的にマグネシウムの摂取量が少なくなると人体内で生化学的経路に変化を生じて時間の経過とともに高血圧や糖尿病などあらゆる疾患のリスクが増加すると言われています。

高齢者の方では普段から食生活においては薄味に慣れていることも多いと思いますが、三大栄養素に追加してマグネシウムなどのミネラルも主菜・副菜からでも勿論いいですし、サプリメントやクリームなども上手に活用して最低限は摂取できるようにしたいものです。

今回の情報が少しでも参考になれば幸いです。

こちらの記事もぜひご覧ください。

マグネシウムを摂取する方法

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引用文献

1)Institute of Medicine(IOM). Food and Nutrition Board. Dietary Reference Intakes: Calcium, Phosphorus, Magnesium, Vitamin D and Fluoride(英語サイト). Washington, DC: National Academy Press, 1997.

DOI  https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/23115811/

著者について

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■専門分野
救急全般、外科一般、心臓血管外科、総合診療領域

■プロフィール
平成19年に大阪市立大学医学部医学科を卒業後に初期臨床研修を2年間修了後、平成21年より大阪急性期総合医療センターで外科後期臨床研修、平成22年より大阪労災病院で心臓血管外科後期臨床研修、平成24年より国立病院機構大阪医療センターにて心臓血管外科医員として研鑽、平成25年より大阪大学医学部附属病院心臓血管外科非常勤医師、平成26年より救急病院で日々修練しております。

■メッセージ
私はこれまで消化器外科や心臓血管外科を研鑽して参り、現在は救急医学診療を中心に地域医療に貢献しております。日々の診療のみならず学会発表や論文執筆等の学術活動も積極的に行っております。その他、学校で救命講習会や「チームメディカル:最前線の医療現場から学ぶ」をテーマに講演しました。以前にはテレビ大阪「やさしいニュース」で熱中症の症状と予防法を丁寧に解説しました。大阪マラソンでは、大阪府医師会派遣医師として救護活動を行いました。